数字で見る地方・小出版流通センターと公立図書館

「出版ニュース」2017年3月中旬号(2441号)に、標題の論考を寄稿した。

地方・小出版流通センターの2002年から2015年までの登録書籍の概要と、2014年と2015年の取扱い書籍5,903点について、国立国会図書館、東京都立中央図書館、東京都53区市町村の所蔵状況を調査し公表した。

同じ号には、早稲田大学の吉田大輔先生のTPP関連改正法と著作権の論考、天下り官僚の是非を問う文章も掲載されている。

[文献リスト]

  • 「二年目を迎える地方・小出版流通センター:投じた一石の波紋は大きい」 新文化. 1977-04-21, p.3.
  • 河北新報社編集局 [編] 地方出版の源流 : 東北の現状と問題点 地方・小出版流通センター 1980.10, 173p.
  • 川上賢一編 「地方」出版論 無明舎出版, 1981.3, 280p.
  • 大原哲夫「地方・小出版とその流通–地方・小出版流通センタ-五年の活動を中心に (出版流通問題の実証的研究<特集>)」出版研究 (12), p10-43, 1981.
  • 川上賢一「地方・小出版流通センタ-の9年 (出版流通と図書館<特集>)」 みんなの図書館 (94), p12-17, 1985-03.
  • 川上賢一「地方・小出版流通センター10年の歩み」出版フォーラム, p. 5-6 1986-07
  • 川上賢一「二十周年を迎えた地方・小出版流通センター」出版ニュース, p. 7-11 1995-01-下旬号.
  • 川上 賢一「地方・小出版流通センタ-の20年 (いま再販問題を問う!)」みんなの図書館 (218), p39-45, 1995-06.
  • 『地方・小出版流通センター20年の歩み』地方・小出版流通センター, 1995, 1冊.
  • 川上 賢一「日本の出版流通の近代 (特集 子どもの図書館講座)」こどもとしょかん (84), 2-13, 2000-01.
  • 「地方・小出版の現況」出版ニュース, p. 21-22, 2005-05-中・下旬号.
  • 川上 賢一 , 沢辺 均 , 斎藤 誠一 [他]「川上賢一ロングインタビュー 設立のきっかけは東村山図書館の「埋もれた良書の掘り起こし運動」だった:地方・小出版流通センターの31年」 ず・ぼん (12), 164-195, 2006-10.
  •  岡崎武志, 柴田信, 安倍甲編 書肆アクセスという本屋があった : 神保町すずらん通り1976-2007 『書肆アクセスの本』をつくる会 , 右文書院 (発売) 2007.12, 235p.

「取次」という用語

拙著『世界の出版情報調査総覧』では、ホールセラー(wholesaler)とディストリビュータ(distributor)を両者とも「取次」という言葉で統一した。各種文献でどのように説明されているかを調査した。

『出版事典』(出版ニュース社 1971)によると、「出版社と小売書店との中間にあって書籍・雑誌などの出版物の卸売を営む販売会社のこと。他の業者の問屋に該当するが、出版物の特殊性により卸す機能よりも取次ぐ機能が根本的に強かったため、問屋ではなく、自然に取次または取次店という呼称が定着した」と説明される。

一般的な説明として、石川県立大学生物資源環境学部生産科学科の有賀健高先生の「農産物市場流通論講義ノート 第4回 流通の基礎概念と機能」(2014/11/10)では、wholesalerとdistributorは次のように説明されている。
卸売業者(wholesaler): 生産者から商品を調達し、主に小売業に対して販売する業者。小売との大きな違いは一般消費者ではなく、大量に商品を購入する業者を相手にしていること。
物流業者(distributor): 物資を生産者から消費者に、時間的、空間的に移動する過程に携わる業者で、具体的には輸送、荷役(にやく:貨物の積み込みや荷下ろし、入庫や出庫の際の作業)、保管、貯蔵、包装などを行っている。

金平聖之助『アメリカの出版・書店』(ぱる出版, 1992)
p. 34 「同一地域内に存在する、地方卸売業(リージョナル、あるいは、ローカル・ホールセーラー)から仕入る」「出版物を積極的に全国規模で書店へ取次配布するのを業務とする全国規模の取次卸業者(ナショナル・ディストリビューター)」
p. 53 「マス・ペーパーバックの流通機構としては、出版社 -> 全国取次業者(ナショナル・ディストリビューター)-> 地方卸業者(ローカル・ホールセラー)-> 小売店(スーパーマーケット、ドラッグ・ストア、コンビニエンス・ストアなど)というのが主流となっている」
p. 54 「全国取次業者は、出版社と地方卸売業者との中間に存在しているものの、実際にはペーパーバックの発送、返品の引き上げ作業に従事しているわけではなく、あくまでも取次配本、返品についての伝票処理を手掛けているにすぎない」「地方卸業者は、業界内ではインディペンデント・ディストリビューター(ID)の名称で呼ばれている」「[新しいタイプの卸業者の]ジョバーは出版社と小売店との間にあって、卸配本を手掛ける点に関してはIDと同一の機能を備えている。ただし、IDが雑誌の卸も行っており、また、取引先が特定の地域内の小売店のみに限られているのに反して、ジョバーの場合には、扱っているのはペーパーバック(ないしハードカバー)である点、取引先が広く全国各地の小売店に及んでいる点において、IDとかなり違った存在」

流通システム開発センター『欧州出版流通システム調査団報告書』(流通システム開発センター, 1997)
報告書では、主に雑誌のdistirburotを「取次」、wholesalerを「仲卸」と訳している。イギリスの場合は「ディストリビューター」は商事会社のような機能、ホールセラーは物流機能を担う。フランスの書籍流通では、「ディストリビューター」を受注と物流業務を担当し、出版社と書店の間の潤滑油として営業を主に担当する「ディフューザー」が存在する。また、ドイツの書籍流通では「ディストリビューター」は版元に代わり、また出版社のために配送業務を行う。ディストリビューターは新刊書の配本を主な役割とし、ホールセラーはディストリビューターも兼務しながらも、注文処理を主な役割としている。

藤本信彦『観察ノート出版業界西と東:20世紀末のアメリカ・カナダ、イギリス、日本の出版産業』(アメリカ出版研究会, 2002)
p. 8~9 (抜粋)
National Distributor(全国雑誌取次)全国規模の雑誌流通を扱う、契約した出版社の雑誌を扱う、チェーン店との取引、大手5社の独占化
National Wholesaler 特定の書店に卸す
Regional Wholesaler National Wholesalerと異なる特定の小売店への卸し

賀川洋著『出版再生:アメリカの出版ビジネスから何が見えるか』(文化通信社, 2001)
p.31~34にずばり「ホールセラーとディストリビュータ」というコラムがある。
p. 31「単純にいえば、ホールセラーとは問屋、あるいは取次と訳し、ディストリビュータは総合出版営業代行会社と訳せばよい。あらゆる出版社の書籍を購入し、自社のネットワークを通してその商品を再度小売店に販売する卸売業者がホールセラーとなる。それに対してディストリビュータは、特定の出版社と専属の契約をして、その出版社の書籍を独占的に販売してゆく機能を持つ業者を指す。ということは、ホールセラーもディストリビュータと契約した出版社の書籍を購入するときは、出版社から直接購入せず、そのディストリビュータから買う。」

藤本信彦『観察ノート出版業界西と東:20世紀末のアメリカ・カナダ、イギリス、日本の出版産業』(アメリカ出版研究会, 2002)
p. 11 local wholesaler(地域取次会社)「北米の雑誌は出版社(印刷所)から、各地に400社程度(?)ある地域取次会社に搬入される」
p. 20 national distributor(全国取次会社)p. 21「全国取次会社と言えば、出版社の販売エージェントだ。北米には主要な全国取次会社が十数社あるそうだ。各地域にある地域取次会社は、雑誌社から直接ではなく、通常これら全国取次会社を経由して雑誌を仕入れている。全国取次会社の詰め所には、13社のセールス・レップが常駐していた」

日本書籍出版協会編集『イギリス出版市場調査報告書2013』(出版再販研究委員会, 2013.7)
ディストリビュータは「出版社直営の流通・配送業者」、ホールセラーは、「卸売業者、日本の取次に類似」

Steigman, Katie “What’s the Difference Between a Wholesaler and a Distributor?,” Greenleaf Book Group, LLC, July 29, 2010