本総覧は,書誌・出版情報を調べるのに有効な書誌データベースを網羅的に収録したガイドブックである。
(1) 収録基準とデータ・内容の収集方法
<収録基準>
不特定多数のあらゆる検索要求を満たす全国規模の書誌データベースを保持する取次,書店,関連団体,そして図書館の目録を収録対象とする。なお目録の公開がなくても知識として有用と思われるものについては収録した。また書誌・出版情報の詳細については当凡例・利用の手引きの後の概説を参照のこと。
(i) 出版流通で構築される目録
販売目録:新刊入手可能な書籍・雑誌を包括的に網羅したリストであること
取次:全国内に書籍と雑誌を配本する全国流通網を持つ業者
書店:ネット書店より実店舗を所有する書店,独立系専門書店より書店チェーン
価格比較:複数書店の目録を横断検索し価格比較を行う
政府刊行物書店:専門書店のみ
電子書籍書店:市販される電子書籍を網羅する書店
雑誌定期購読:市販される雑誌を網羅する業者
古書店:複数の古書店から構成される連合目録
上記に該当する販売目録126目録,取次172社,書店464社,価格比較61サイト,政府刊行物書店7社,電子書籍書店58サイト,雑誌定期購読111社,古書店総合目録63サイトを収録した。
(ii) 図書館および灰色文献に関係した目録
図書館蔵書目録:特定の国で刊行されたあらゆる出版物を網羅する目録。国立図書館または複数図書館の蔵書を統合した総合目録
学位論文:全国の高等学術機関で授与された博士論文等を網羅する目録
政府刊行物:政府関係機関により作成された刊行物を網羅する目録
電子図書館:無料で利用できる電子図書(電子書籍)の網羅的リスト
上記に該当する図書館蔵書検索396目録,学位論文検索28目録,政府刊行物検索16目録,および電子図書館関連13サイトを収録した。
(2) 調査時期
2010年1月から3月 国別の図書館蔵書目録(全国書誌)調査
2011年1月から3月 国別・取次/書店/古書店調査
2011年6月から11月 本書執筆
(3) 利用上の便宜
(i) 本文の構成
世界109か国をアジア・オセアニア,ヨーロッパ,アメリカ大陸,中東・アフリカの4つの地域に分け章とした。各地域(各章)に属する国々は日本十進分類法(NDC)の地理区分を参考に,頁数の加減,政治,経済,歴史的経緯も加味しながら配置し,項目一覧に従って配列した。
(ii) 国別の基本的な項目
項目として該当がない場合は省略した。また,「2. 概説」の記述を付与したのは日本,韓国,中国,台湾,ドイツ,フランス,ロシア,アメリカの8か国のみである。
国名(英語)
1. 基本事項
首都
政体
元首
宗教
言語
通貨
時差
ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)
再販制度
ISBN管理機関
ISSN管理機関
全国書誌作成機関
ISBN国番号
2. 概要
その国の出版流通の特徴など
3. 販売目録
書籍総目録,雑誌便覧(リスト)に対し下記の項目を付与した。
①商品: ②収録件数: ③収録年: ④運営元: ⑤特記: ⑥URL:
4. 出版流通 取次・書店・定期購読
取次,書店,雑誌定期購読(雑誌),電子書籍書店(電子書籍),古書店連合目録(古書)に対し,下記の項目を付与した。
①業種: ②創業・設立: ③点数: ④特記: ⑤店舗数: ⑥旗艦店: ⑦在庫検索: ⑧URL:
(列挙順序)
取次(書籍,雑誌の順)
書店(リアル,ネットの順)
価格比較サイト
電子書籍(場合によっては下に移動)
雑誌
古書店総合目録
5. 図書館蔵書目録 時代別
全国書誌的な図書館蔵書目録,総合目録,政府刊行物,学位論文,電子図書館に対し,以下の項目を付与した。
①管理運営: ②作成・参加館: ③検索対象: ④レコード件数: ⑤書誌データフォーマット: ⑥特記: ⑦URL:
収録データベース,サイトについての補足
(1) 政体と元首
本を買うにはあまり関係ない項目である。しかし,元首が書いた本が,書店という書店に溢れている国が世界にはある。プロパガンダとメディアは切っても切れない仲である。
(2) 為替レート
2011年12月現在1米ドル80円,1ユーロ100円前後で推移している。洋書を購入するには好条件だが,長い目で見ると参考になるか否か判断できない。本書には掲載せず,自分自身で為替変換を行なって確認してほしい。
(参考)
・為替レート計算(http://www.oanda.com/lang/ja/currency/converter/)
(3) 出版社・取次・書店の区別
出版社,取次,書店の3機能が分離していない国も存在する。出版をしながら,競合出版社の本も同時に流通・販売・頒布も行う書店も少なくない。筆者自身の不勉強からどの機能で分類すべきか迷った企業がいくつかあるが,最終的には筆者が受けた印象で分類した。ただし,取次・書店業を行わない専業出版社は,有力出版社であっても原則収録しないこととした。またどんなに有名であっても独自サイト(ホームページ)を持たない取次・書店も原則除外した(例えばポルトガル・ポルトのLello書店)。
(4) 取次,書店,雑誌定期購読など
全国あるいは地域展開する取次,書店,雑誌定期購読(雑誌販売店)を優先し,単独店であっても大型書店,在庫状況が表示される等の特色ある書店については選出した。古書店については複数書店による連合目録のみ。各社の情報は原則運営サイトから取得した。
(5) 取次・書店の配列順位
文献等を参考に筆者の独断と偏見で配列順位を決めたので客観的な順位ではない。また大手検索サイトの表示順位(例えばその言語で「書店」を意味する言葉での検索の表示順)も加味している。どの書店の目録から検索するか迷った時は,一番目の書店目録を引けばまず間違いないようにした(だからと言って「値引き率」が高いとか,「送料」が安いとかではありません!)。本当に迷ったら価格比較サイトを使って欲しい。
(6) 「書店」という名称
書店は1990年代末から,チェーン化,大型化が加速する一方で,専門化・細分化も進んでいる。また書籍だけでなくCD,DVD,ゲーム,文房具,カフェ等との複合化も行われており,「書店」以外の名称を用いるのが適当な時代がきているのを感じるが,本書では「書店」とした。
(7) 「チェーン」と「フランチャイズ」
書店チェーンは,同一形態のチェーン店(直営店)とフランチャイズ店(加盟店)に区別されるべきではあるが,本書では厳密に区別しないで,同一形態で統一性を持った複数店舗の集合体という意味で「チェーン」に統一した。
(8) 創業・設立年
書店サイトの会社概要・沿革に掲載された年(西暦)を転記した。未掲載の場合は各国の企業データベースや参考図書(後述)によった。不明な場合は推定(西暦の後に「?」を付与)で記入,もしくは「不明」とした。
(9) 取次・書店・定期購読などの「③点数」について
各社運営のウェブサイトに掲載されている数字を転記した。その数字は実店鋪で扱っている出版物であったり,あるいはネット店で扱う出版物の数字であったりする場合もある。「titles」に相当する数字は「点」,「volumes」に相当する数字は「冊」,雑誌の場合は「誌」という言葉を使い,必ずしも「点」ではないことがある。
(10) 旗艦店
その書店を代表する店舗を「旗艦店」とした。旗艦店は書店毎に定めていることが多いが,不明な場合は話題店や巨大店舗を代わりに選出した。またカフェが併設されるのは珍しくない。海外で有名なカフェで時間を過ごすのも有意義ではあるが,頻繁に高いお店に入るわけには行かない。筆者の海外旅行の経験では,普通のカフェより書店併設のカフェは安価に休憩,水分補給できることから,書店サイトに「カフェあり」と謳っている場合は特記や旗艦店の項目に「カフェあり」を入れておいた。ただし,本書に「カフェあり」の記述がなくても実際は併設されている場合もある。
(11) 書店の送料
購入の参考に,ネット書店の送料を掲載すべきところだが,改定が頻繁に行われるので掲載しない。これも自分の目で確認してほしい。
(12) 図書館蔵書目録:時代別目録,政府刊行物,学位論文
原則,図書館そのものではなく,その国のその時代の出版情報を網羅するような全国書誌的目録と複数館による全国総合目録を選出・配置した。既にサービス自体が存在しない目録や書籍のみしか存在しない目録であっても,歴史的意義・書誌の賞味期限内であると認められるものは収録した。
(13) 古版本
西洋の15世紀から16世紀にかけて作られた写本や刊本(インキュナブラや初期刊本)を「古版本」と称した。
(14) 電子図書館
消極的な収録をお許しいただきたい。本編には収録していないが,2008年に国立国会図書館を中心とした電子書籍配信構想(長尾私案)は,出版業界の反発を受けながらも,最終的には官民挙げた最大級の電子図書館が実現する可能性がある。また2012年には出版業界を中心に電子書籍ビジネス拡大を支援する「出版デジタル機構」が設立された。